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元銀行員が住宅ローンのすべてをわかりやすく説明します

公開日:2019年 4月14日
更新日:2023年 8月25日


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離婚したら住宅ローンはどうなる

前のページでは借主が死亡した場合の住宅ローンについて述べました。
ここでは借主が離婚した場合の住宅ローンについて説明します。
離婚の場合は死亡の場合と異なり、夫婦が共に生きており状況はとても複雑になります。
また最近は離婚率が高く、借主が死亡した場合に比べてその確率も格段に高いと言えるでしょう。
家族の幸せために購入したマイホーム、そのために借入れた住宅ローンが離婚という家族の崩壊によってどうなるのかを見ていきます。


住宅の財産分与

離婚する場合は財産分与が行われます。
財産分与とは、離婚をした者の一方が他方に対して財産を分与すること(民法768条)で、当事者間の協議で財産分与の額・方法などを定めるのが原則です。
夫婦の共有財産(プラスのもの)から夫婦の生活のための債務(マイナスのもの)を差し引いた残りの部分が財産分与の対象になるのが一般的です。
土地・建物も財産であり、住宅ローンが残っている住宅の財産分与はどのように行われるのでしょうか
住宅ローンが残っている住宅の場合には、住宅の現在価値から住宅ローン残高を差し引いた部分が財産分与の対象になります。
住宅ローン残高の方が住宅の現在価値よりも多い場合には、財産分与の対象にはなりません。
ですから、住宅の現在価値と住宅ローン残高がどのようになっているのかが、とても重要になります。
住宅の現在価値 > 住宅ローン残高 → 住宅が財産分与の対象になる
住宅の現在価値 < 住宅ローン残高 → 住宅が財産分与の対象にならない
ここではわかりやすいように、住宅だけで表示していますが、実際には他の財産も含めてトータルで考えられます。

住宅を売却する場合

離婚することで、財産を分与するために住宅を売却することがあります。
その場合には、住宅の現在価値が住宅ローンの残高よりも大きいか小さいかで扱いが変わります。

住宅の現在価値の方が大きい場合(住宅の現在価値 > 住宅ローン残高)
この場合には、財産分与の対象部分について二人で分けることになります。
2分の1ずつ分けるとすると、例えば、住宅ローンを差し引いた価値が500万円であれば、250万円ずつ分割します。
住宅を売却するためにかかった費用があれば、各々で負担します。

住宅ローン残高の方が大きい場合(住宅の現在価値 < 住宅ローン残高)
住宅を売却しても住宅ローンが残る場合には、残りの部分を現金で準備し返済に充てる必要があります。
不足する部分をどちらがどう負担するかは、別途の話し合いで決めます。

簡単に言えば家を売った代金で住宅ローンを完済できれば残ったお金を分けて、反対に家を売った代金が住宅ローン残高に足りなければその足りない分をどうするか話し合うというわけです。

引き続き居住する場合

離婚する場合、住宅を売却するよりもこのケースの方が多いでしょう。
夫もしくは妻が引き続き居住する場合をはどのようになるでしょう。
ここでは住宅の名義、住宅ローンの借入者共に夫の場合で説明します。

夫が引き続き居住する場合
住宅と住宅ローンの両方の名義が夫で、夫が引き続き居住する場合には、その後の住宅ローンも夫が引き続き支払います。
ただし、住宅の現在価値の方が住宅ローンより大きく、財産分与の対象となる部分がある場合には、夫から妻にその分の金銭を支払うなどが必要になります。

夫名義のままで妻が居住する場合
住宅と住宅ローンの両方の名義はそのままで、妻が居住することになった場合には、住宅ローンは引き続き夫が支払っていきます。
しかし、将来、夫が支払わなくなるというリスクもあります。
また、この場合、居住者と住宅ローンの名義(債務者)が異なるので、金融機関に承諾を得ることも必要です。

妻に名義変更して妻が居住する場合
財産分与で住宅の名義は妻に移し、残りの住宅ローンも妻が引き受ける方法もあります。
ただし、この場合には、妻が住宅ローンを借入れできる状況であることが必要です。
収入や就業状態などから銀行が審査を行います。
また、金融機関によって対応してくれない場合がありますので、金融機関に確認しましょう。

住宅ローンが共有名義の場合

夫婦でペアローンを組んで、住宅が夫婦の共有名義になっているケースは少なくありません。
住宅を共有名義のままにしておくと、その後売却したいと思っても相手と連絡が取れなかったり、相手が死亡した場合は相手の新しい家族が持分を相続するなど、なにかとトラブルになる可能性が高くなります。
離婚する場合、住宅は夫か妻のどちらか一方の名義に変更しておいた方がいいでしょう。
ペアローンを組んでいて、まだ住宅ローン残高が残っている場合には、引き続き各々が返済を続ける方法と相手の分の借入れを引き継ぎ一人で返済していく方法の二通りがあります。
ペアローンを組んでいる場合には、お互いが連帯保証人になっています。
ですから、各々が返済を続けていた場合でも、将来、どちらかが滞納した場合に金融機関から返済を迫られる可能性があります。
住宅ローンをどちらかが引き継ぐには、引き継ぐ分も含めて借り換えする方法が考えられます。
借り換えをして一人の債務にすることにより、連帯保証もなくなります。
しかし、一人で借入れするだけの収入があるかなど、金融機関の審査があります。
収入合算で借入れをし、一方が連帯保証人になっている場合には、その後連帯保証人は住まなくなったとしても連帯保証人のままになるので注意が必要です。
連帯保証人を外してもらうには、銀行の承諾が必要です。
ただし、新たな保証人を求められたり、ローン残高を減らすことが条件となることもありますので、金融機関に相談してみましょう。

離婚するということは一般的には夫婦の関係が悪化している状況です。(円満離婚もあるかもしれませんが)
ですから、財産分与はもめるケースが大半です。
通常の金品ですと分割しやすいんですが、住宅という資産、とりわけ住宅ローンという債務を負った住宅の場合は権利関係が複雑ですし、それに加えて住宅をどうするか、どちらが住むかという問題がからみ、事態は一層複雑になります。
夫婦間でどうしても決着がつかない場合は、最終的に家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。
しかし、そうなる前に弁護士などの専門家に相談し、将来禍根を残さないようにすることが大切です。
離婚するとはいえ一度は愛し合って結婚し家まで持った間柄、それ以上憎しみ合うのは避けたいものですね。


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