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元銀行員が住宅ローンのすべてをわかりやすく説明します

公開日:2019年 4月14日
更新日:2019年 4月14日


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失業したら住宅ローンはどうなる

失業してしまったら住宅ローンはどうなるのでしょうか?
「転職したら住宅ローンはどうなる」のページで説明しましたが、失業保険やこれまでの貯えで毎月の返済を行っている限りは、金融機関から一括返済などは求められません。
住宅ローンの返済期間は30年とか35年とかの長期に亘ります。
そんな長い期間、人生何があるかもわかりません。
返済期間中に亡くなってしまう方も少なくないんです。(亡くなった場合は団体信用生命保険(団信)の保険金で住宅ローンは返済されます。 団体信用生命保険(団信)の詳細は「団体信用生命保険(団信)」のページをご参照ください)
ですから、住宅ローンの返済期間中に失業される方も少なくありません。
確かに、住宅ローン申し込み時はその時の勤務先、収入で審査をしますが、きちんと返済を続けてている限り、その後転職しようが、失業しようが、金融機関は何も言いません。
金融機関は貸し出した住宅ローンをきちんと返済さえしてくれればそれでいいんです。
これは、期限の利益という考え方に基づくものです。


期限の利益とは

期限の利益とは、期限を決めることで債権債務に係る当事者が受ける利益のことで、期限が到来するまで、債務を履行しなくてもよい債務者側の利益のことを言います。
つまり、契約書上で規定された期限が来るまでは、借入金等の債務に関する返済を行わなくてもいい債務者側の利益のことです。
この期限の利益が無かったとすると、例えば住宅購入のために3,000万円を借りたとしたら、債権者である金融機関の都合で翌月に3,000万円を一括請求されるような事態が発生してしまします。
これはあんまりですよね。
期限の利益は債務者が金銭等を借りる際、一定期間の返済期限を設けることが出来る権利で、言い換えれば分割払いの権利ということになります。
期限の利益があることで「住宅ローンで借りた3,000万円は35年後までに返済し、それまで月々15万円の返済を420回の分割で行なう。」というような住宅ローン契約を結ぶことができるんです。
この期限の利益があることで、債務者は安心して住宅ローンを組むことが出来るのです。
しかし、この期限の利益は、延滞などで喪失してしまうことがあるんです。
失業した場合、収入が途絶えてしまうわけですから延滞するリスクがどうしても高くなってしまいます。

期限の利益の喪失

期限の利益の喪失に関しては民法第137条に明記してあります。
民法第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
つまり、債務者が自己破産手続きを開始したり、担保が無断で売られたり、差し出されないような場合、期限の利益を喪失してしまいます。
しかし、上記の内容だけでは債権者である金融機関がが不利になることもありますので、住宅ローン契約時に債務者と債権者の当事者同士で追加の条項を決めるるんです。
例えば「分割支払が滞ったら(延滞)、残りの金額を一括請求する」といった内容です。
住宅ローンの場合、一般的に6回の滞納が続くと期限の利益の喪失になってしまうことが多くなっています。
1~5回の滞納で督促書や催告書などが送られ、それでも返済がされない場合、いよいよ期限の利益喪失通知書が届き、期限の利益を喪失してしまいます。
そうなると、住宅ローンを一括で返済しなければならなくなります。


失業の問題は収入が途絶えてしまうこと

上述のように、失業しても失業保険や貯蓄、親兄弟からの借金等で住宅ローンの返済ができているうちは何も問題はないんですが、失業してしまうと収入が途絶えてしまいますので、いつかは毎月の返済も困難になり、延滞が発生して期限の利益を失ってしまうことになりかねません。
そうなってしまうと住宅ローンの一括返済を求められ、当然一括返済などできませんので、土地・建物が取られてしまいます。
失業してしまったら次の仕事を探すことになりますが、すぐに次の仕事が見つかればそのまま住宅ローンの返済を続けていくことができるかもしれません。
しかし、次の仕事がなかなか見つからず、住宅ローンの返済ができなくなるようであれば、その場合は金融機関に早めに相談してください。
金融機関も鬼ではありません。
返済条件の緩和など相談に乗ってくれるはずです。
住宅ローンの返済に困った場合については「住宅ローンの返済に困ったら」のページで説明していますので、こちらをご参照ください。
とにかく、延滞してからでは遅いんです。
失業の場合は転職とは違い、収入が途切れてしまいますので、住宅ローンの返済ができなくなる可能性が高いんです。
返済が厳しいと思ったら、金融機関に即相談してください。
新しい就職先が見つかった場合は、金融機関への届出が必要になります。
仮に延滞がなかったとしても、住宅ローン契約の際には名前や住所をはじめ勤務先も届出事項となっていますので、契約約款にも届出事項に変更があった場合は、所定の手続きや届出をするよう明記されていますので、新しい勤務先を届け出ることが必要です。


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