住宅ローンの金利引き下げ交渉は可能か
買い物をする時、あなたはその値段を値切りますか?
私の家内は大阪出身のくせにとてもそんなこと言えないと言いますが、私はまず値切ってみます。
特に電化製品など値の張るものでしたらダメ元で値切ってみるんです。
ダメな場合もありますが、意外と値引きしてくれることも少なくありません。
では住宅ローンの金利はどうでしょうか?
「もう少し、金利を低くして」って言えるものなんでしょうか。
結論から言うと可能です。
しかし、誰に対してでもその金利引き下げに応じてくれるわけではありません。
大きな借金である住宅ローンの金利はなるべく低く借りたいものです。
金利が0.1%違うだけでも、返済額は大きく変わってきます。
具体例で見てみましょう。
借入条件は借入金額4,000万円、返済期間35年、全期間固定金利型、元利均等返済、ボーナス併用払いなしとします。
金利 |
毎月返済額 |
年間返済額 |
総返済額 |
3.0% |
153,940円 |
1,847,280円 |
64,654,800円 |
2.9% |
151,716円 |
1,820,592円 |
63,720,720円 |
2.8% |
149,510円 |
1,794,120円 |
62,794,200円 |
2.7% |
147,321円 |
1,767,852円 |
61,874,820円 |
2.6% |
145,151円 |
1,741,812円 |
60,963,420円 |
2.5% |
142,998円 |
1,715,976円 |
60,059,160円 |
ご覧の通りわずか0.1%の金利差であっても、毎月で約2,200円、年間で約27,000円、総額では90万円以上の差になるんです。
たった、0.1%の金利差ですよ。
金利引き下げ交渉で、0.1%でも0.2%でも金利が下がればめっけものです。
ここでは金利引き下げ交渉について説明していきます。
住宅ローンの基準金利と引き下げ幅
金融機関のパンフレットやホームページで住宅ローンの金利を見てみると、多くの金融機関に「引き下げ幅」というものがあります。
これは、本来の金利(基準金利、店頭金利などといわれるもの)からどれだけ引き下げてくれるかというもので、この「引き下げ幅」が大きいほど、実際に適用される金利が低くなります。
では具体的に2019年(平成31年)3月の三菱UFJ銀行の住宅ローン金利で見ていきます。
変動タイプ(店頭表示金利より年-1.7%~最大年-1.85%)
|
店頭表示金利 |
引下後の金利 |
変動(毎月型・年2回型) |
年 2.475 % |
年 0.625 % ~ 年 0.775 % |
固定特約タイプ(店頭表示金利より年-1.7%~最大年-1.85%)
|
店頭表示金利 |
引下後の金利 |
固定1年 |
年 2.85 % |
年 1.00 % ~ 年 1.15 % |
固定2年 |
年 2.95 % |
年 1.10 % ~ 年 1.25 % |
固定3年 |
年 2.94 % |
年 1.09 % ~ 年 1.24 % |
固定5年 |
年 3.25 % |
年 1.40 % ~ 年 1.55 % |
固定7年 |
年 3.30 % |
年 1.45 % ~ 年 1.60 % |
固定10年 |
年 3.29 % |
年 1.44 % ~ 年 1.59 % |
固定15年 |
年 4.25 % |
年 2.40 % ~ 年 2.55 % |
固定20年 |
年 4.60 % |
年 2.75 % ~ 年 2.90 % |
上記のように三菱東京UFJ銀行では変動タイプ、固定特約タイプ共に年-1.7%~最大年-1.85%引き下げに幅をもたせています。
この引き下げ幅は金融機関によっても異なりますし、同じ金融機関でも時期によって変動します。
適用される引き下げ幅は審査によって決まります。
審査において、物件の価値や、借入れする人の返済力といった信用力を総合的に判断して決定されるんです。
それでは、どのような人の引き下げ幅が大きくなるのでしょう。
「安定した会社に勤めていて、なおかつ安定した収入があり、この人なら確実に返済してくれる」と銀行が判断した人です。
住宅ローンの審査では、勤務先も安定していて本人の毎年の収入に大きな波がない人の方が望ましいと考えられ、公務員や大手企業の正社員などがこれに当てはまります。
「確実に返済してくれる」という点では返済に余力がある方がよいので、年収が高かったり、年収に対しての借入額が適正かどうかがポイントになります。
年収に対しての借入額が適正かどうかについては主に「返済負担率」(年間返済額の年収に対する割合)というもので判断されます。(返済負担率については『「借入できる金額」と「返済できる金額」』のページをご参照ください)
このように金融機関は住宅ローンの審査において、安全確実な人を判断してより大きな金利の引き下げ幅を適用しているわけなんです。
上記の三菱東京UFJ銀行のケースでしたら、0.15%の幅で金利引き下げに差をつけていることになります。
住宅ローンの金利引き下げ交渉をやってみる
銀行から住宅ローンの金利が提示され、基準金利(店頭表示金利)からの引き下げ幅が小さかった場合、「もう少し金利を下げてほしい」と交渉する余地はあるのでしょうか?
上記の三菱東京UFJ銀行のケースでしたら、年-1.7%~-1.85%の引き下げ幅ですので、引き下げ幅が年-1.7%の金利が提示されたような場合です。
このようなケースでは金利引き下げ交渉をやってみて下さい。
金利引き下げができるかできないかはわかりません。
もしできればめっけもの、返済負担は減ることになります。
実際、顧客からの申し入れで金利が下がったケースは珍しくありませんし、交渉しなければ金利はそのままなんです。
金利引き下げ交渉はメリットこそあれデメリットは何もありません。
臆することなくチャレンジしてみて下さい。
住宅ローンの申し込みは、銀行の本支店の窓口で行いますよね。
元銀行員の立場から言えば、この手の申し入れは超めんどくさいです。
一旦決まった住宅ローン金利の変更にはそれなりの手続きがあるからなんです。
住宅ローンとはいえ、審査は本部で行いますし、金利に関して支店長に裁量はありません。
金利の引き下げには、本部にお伺いを立てなければならないんです。
金融機関内の手続きはそれぞれだと思いますが、稟議や協議書等が必要な場合もあります。
ですから、担当者は正直嫌な思いをしていますが、そんなこと構ったこっちゃありません。
こっちは少しでも返済負担を軽くしたいわけですから。
ここでもう一度おさらいです。
交渉の結果金利を下げられる人はどのような人でしょう?
金融機関が「この人に借りてほしい」と思う人です。
上述したような、確実に返してくれる、いわゆる良質な顧客である必要があります。
自分に金利を引き下げてもらえるような条件が揃っているかを客観的に観察し、それを具体的に示すような材料があれば積極的に提示しましょう。
それは何でも構いません。
他の金融機関で保有している預金や有価証券といった金融資産の明細や将来相続するであろう親の財産明細などでも構わないんです。
自分が確実に返済できる状況をPRすることで条件が有利になります。
これとは別にとっておきの裏ワザを一つ。
他の金融機関で仮審査を受けてみる
他の金融機関で仮審査を受けてみるのも一手です。
もっと低い金利で審査が通っていることを示すことができれば、説得力が増すとともに凄まじい効果を発揮します。
金融機関同士の住宅ローン獲得競争はとにかくに熾烈です。(詳細は「銀行の住宅ローン獲得競争は熾烈」のページをご参照ください)
他の金融機関に住宅ローンを持っていかれたら元も子もありません。
担当者は必死になって金利の引き下げを本部と協議するでしょう。
私が以前勤務していた金融機関はこれが一番効きました。
仮審査を受けた金融機関の条件が良ければそっちで住宅ローンを借りればいいだけの話ですから。
まとめ
住宅ローンの金利引き下げ交渉は可能です。
というより、やらなきゃ損です。
もちろん、それをやるためには返済能力、信用力が高い人でなければなりません。
住宅ローンの審査に通るかと通らないかのレベルではこの交渉は無理です。
自らの返済能力、信用力に自身があればぜひトライしてみて下さい。
金利引き下げ交渉はメリットこそあれ、何のデメリットもないのですから。
サントリー創業者の鳥井信治郎が残した名言「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」はまさに金利引き下げ交渉にピッタリの言葉だと思います。