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元銀行員が住宅ローンのすべてをわかりやすく説明します

公開日:2019年 4月14日
更新日:2019年 4月14日


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住宅ローンの期限の利益

期限の利益という言葉を聞いたことがありますか?
銀行員にとってはとても馴染みのある言葉で、頻繁に使う用語です。
一般の方にはちょっと馴染みのない言葉かもしれませんが、住宅ローンの借主である債務者にとってはとても大切なもので、この期限の利益に基づいて住宅ローンの支払いが行われ、債務者を守る権利でもあります。
ここでは住宅ローンの期限の利益について説明します。


期限の利益とは

期限の利益とは、期限を決めることで債権債務に係る当事者が受ける利益のことで、期限が到来するまで、債務を履行しなくてもよい債務者側の利益のことを言います。
つまり、契約書上で規定された期限が来るまでは、借入金等の債務に関する返済を行わなくてもいい債務者側の利益のことです。
この期限の利益が無かったとすると、例えば住宅購入のために3,000万円を借りたとしたら、債権者である金融機関の都合で翌月に3,000万円を一括請求されるような事態が発生してしまします。
これはあんまりですよね。
期限の利益は債務者が金銭等を借りる際、一定期間の返済期限を設けることが出来る権利で、言い換えれば分割払いの権利ということになります。
期限の利益があることで「住宅ローンで借りた3,000万円は35年後までに返済し、それまで月々15万円の返済を420回の分割で行なう。」というような住宅ローン契約を結ぶことができるんです。
この期限の利益があることで、債務者は安心して住宅ローンを組むことが出来るのです。
しかし、この期限の利益は、延滞などで喪失してしまうことがあるんです。

期限の利益の喪失

期限の利益の喪失に関しては民法第137条に明記してあります。
民法第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
つまり、債務者が自己破産手続きを開始したり、担保が無断で売られたり、差し出されないような場合、期限の利益を喪失してしまいます。
しかし、上記の内容だけでは債権者である金融機関がが不利になることもありますので、住宅ローン契約時に債務者と債権者の当事者同士で追加の条項を決めるるんです。
例えば「分割支払が滞ったら(延滞)、残りの金額を一括請求する」といった内容です。
住宅ローンの場合、一般的に6回の滞納が続くと期限の利益の喪失になってしまうことが多くなっています。
1~5回の滞納で督促書や催告書などが送られ、それでも返済がされない場合、いよいよ期限の利益喪失通知書が届き、期限の利益を喪失してしまいます。
そうなると、住宅ローンを一括で返済しなければならなくなります。

どうでしょう、住宅ローンが金融機関から急に全部返せと言われないのは、この期限の利益で債務者が守られていたからなんですね。
住宅ローンの場合は債権者である貸し手が金融機関、債務者は借り手である借主です。
これが預金であると立場は反対になります。
債権者は預金者、債務者は金融機関です。
預金という形で銀行にお金を貸していることになります。
預金者(債権者)が定期預金の1年物を途中で解約した場合、定期預金に定められた利息ではなく、普通預金の利息で払い戻されます。
なぜこういうことになるかと言うと、預金者(債権者)が銀行(債務者)に1年間定期預金としてお金を預けますから利息を〇〇%を付けて下さいねと合意したにもかかわらず、預金者(債権者)が途中でお金を引き上げてしまったので、銀行にとって期限の利益が喪失したことになり、当初合意していた〇〇%の利息を支払わずに、普通預金の利息を支払ったということになっています。
このように銀行員にとって期限の利益という考え方はとても馴染み深いんです。


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